瓢箪日記

備忘録

実相院門跡展 幽境の名刹

京都文化博物館、2016.2.20-4.7

 

京都岩倉の実相院の文書と障壁画を展示し、研究論文を多く掲載した図録をISBNあり書籍として思文閣から刊行する企画。広くはない展示室なので、障壁画は前期・後期で入れ替え。障壁画がおさまる客殿は東山天皇中宮である承秋門院の御所を享保6年(1720)に移築したものだが、それは建物だけであって、障壁画はどうやら他の公家屋敷から移されたものらしい。御所の記録と画題が合わないためだそうだ。奥平俊六氏による論考を読むと、推理小説のようなパズルのような面白さともどかしさを味わう。地味だが力量のある狩野派絵師が描いた障壁画。一部には京狩野四代目永敬の落款があり、流れるような枝振りは京狩野のマニエリスムをよく伝える。全体に、図版で見ると輪郭線が濃くコントラストが強いので写しのように感じて評価が辛くなりそう。せっかくの機会なので、群鶴図の上品な機知など、実物を見るべし。龍谷ミュージアムの聖護院門跡展につづき、前後の時代の門跡寺院の様子を知るためにも価値ある展覧会。