瓢箪日記

備忘録

名古屋で西洋美術を

・聖なる風景 ルネサンスからルオーまで

 ヤマザキマザック美術館、2015.11.20-2016.2.28

ボストン美術館 ヴェネツィア展 魅惑の都市の500年

 名古屋ボストン美術館、2015.9.19-2016.2.21

 

名古屋には西洋美術の優れたコレクションと展示でいつも期待を裏切らない美術館が3つある。それがヤマザキマザック名古屋ボストン美術館、そして愛知県美術館。巡回展も多いが、このたび前2館で開催中の展覧会はぜひセットで鑑賞したい。

聖なる風景は岡崎市美術博物館と三重県立美術館から優品を借りての企画展。17世紀バロック絵画を中心にルオーの版画連作を組み合わせる異色の宗教画展。キリストの生涯や殉教者など、キリスト教画題の勉強にもなる。ヤマザキマザックは日本では珍しいオールドマスターの収蔵品を、ホワイトキューブではない欧風の展示空間を再現して見せてくれる貴重な美術館。東京では八王子駅からバス20分の、東京富士美術館の常設展示室が同様のコンセプトで希少。

ヴェネツィア展は、単に名品展ではない。導入部の地図と古写真、エッチングによる風景からして、まるでヴェネツィアを旅するかのような優れた企画展。肖像画、宗教画とつづく構成は、ヴェネツィア絵画の特徴を都市と大教会堂など建物のあり方や時代背景とからめて自然に見せることに成功している。ティツィアーノ、ティントレット、ヴェロネーゼらの作品を配置しながら、油彩画を十分に用意できない部分にはティツィアーノ原画の版画を補う工夫も。主要産業であるガラス、織物から服飾デザインまで押さえる。最終章はヴェネツィアの美しさを描いた印象派、ホイッスラー、現代の写真までをカバーする。

いずれも生きた西洋美術史のテーマが盛りだくさんの好企画だ。