美の宴
第21回秘蔵の名品アートコレクション展
美の宴 琳派から栖鳳、大観、松園まで
ホテルオークラ東京 本館1階「平安の間」
毎年ホテルオークラで開催されてきたチャリティー企画展だが、今回の展示終了後にホテルは建替え工事に入る。有名なロビーでは記念撮影をする人が後を絶たない。感慨深げな展示のテーマは「美の宴」。副題には著名作家の名前が並び、企業コレクションの豊かさと趣味の良さを感じる。必見作品の一つは、副題にはない今村紫紅「護花鈴」(霊友会妙一コレクション)だろう。日本の作家たちの中でマティス「ジャズ」がアクセントを与えている。
酒井抱一「四季花鳥図屏風」(陽明文庫)は華やかな金屏風でいかにもホテルの広間にふさわしく、江戸時代にも同じような祝祭の場に使用されたのではないかと思わせる。軍鶏を描いた竹内栖鳳「蹴合」(大倉集古館)、石崎光瑤「藤花孔雀之図」(南砺市立福光美術館)は巨大な掛軸でこちらを圧倒する。この2点は大倉集古館コレクションを作り上げた大倉喜八郎の子、喜七郎が尽力したローマ展(1930年)出品作であり、今ここで展示されるにふさわしい。
ホテルオークラの敷地内に立つ大倉集古館もリニューアル工事の最中である。同館コレクションはしばらく他館で見ることになる。再びホームで作品を見るのを楽しみにしたい。
花ひらく琳派
特別出品ー本阿弥光悦作【国宝】白楽茶碗 銘 不二山
サンリツ服部美術館-11/15.
今年2015年は「琳派400年記念祭」で京都が盛り上がりを見せている。諏訪湖畔の景勝地にたつサンリツ服部美術館は、本阿弥光悦作の楽茶碗(銘「不二山」)をはじめとする充実した琳派のコレクションを、同時代の焼きものと合わせて展示している。
本阿弥光悦・光甫、俵屋宗達、喜多川相説、尾形光琳・乾山、酒井抱一、鈴木其一とバランスよく作品を集めている。焼きものもまた楽家、織部、志野、阿蘭陀写しと釣り合いが取れていて、〈茶道具コレクターの視点から蒐集された琳派作品〉を活かした構成が工夫されている。
展示室は小規模で親密な空間である。宗達下絵、光悦書「四季草花下絵古今集和歌色紙帖」など名品や、抱一が『光琳百図』に写し取っている光琳「牡丹図」、『光琳百図』所収の光琳作品を展開した構図で、珍しく麻布に描かれた抱一「紅白梅図屏風」など資料的価値も高く見所ある作品を堪能できる。
絵画作品は前期・後期で大幅な入れ替えあり(9/14展示替え)。
NO MUSEUM, NO LIFE?
NO MUSEUM, NO LIFE?これからの美術館事典 国立美術館コレクションによる展覧会
東京国立近代美術館~9/13.
国立の美術館5館がコレクションを持ち寄る展覧会シリーズ2段目。
すなわち主催は独立行政法人国立美術館(東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、国立西洋美術館、国立国際美術館、国立新美術館)、共催には朝日新聞社、東京新聞、日本経済新聞社、毎日新聞社、読売新聞社、NHKとずらり。
タイトルからはどんな展覧会だかピンとこない。プレゼントの箱を開けるようなわくわくを胸に訪れるのがいい。
簡単に記しておくと、観客はAからZまで順に並んだキーワードを追って会場を進んで行く。AならArt Museum、Architecture、Archive、Artist(美術館、建築、アーカイヴ、アーティスト)という美術館に関連する用語が挙げられ、それぞれに関連する作品が展示されている。まさにキュレーション。
作品だけではなく、展示具や展示プラン案など美術館の備品等が合わせて展示されているのが面白い。Handling(取り扱い)では美術品取り扱い説明用ビデオと、段ボールを持ち田中功起が美術館内を全速力で走るビデオが並び思わずクスりと笑わせる。
見終わると、展示を作り上げる学芸員の存在が浮かび上がる(Curatorは展示されていない)。
絵の音を聴く
コレクション展 絵の音を聴くー雨と風、鳥のさえずり、人の声ー
根津美術館~9/6.
少し視点をずらすと新鮮に見える景色がある。
優れたコレクションで知られる根津美術館では作品の魅力をさらに引き出す企画展を開催中。画題は花鳥図、竜虎図、名所図など、ジャンルも仏画、水墨画、文人画など、多彩な作品が並ぶ手頃な広さの展示室を、一点一点耳を傾けながら鑑賞する。
鮮やかな色彩が目をひく鈴木其一「夏秋渓流図屏風」も水流の音に耳を澄ますと清冽な響きに蝉声がしみ入り、絵から受ける奇妙な感覚がさらに増す。憧れの中国イメージを雄大に描き出す池大雅「洞庭赤壁図巻」(個人蔵)を音の視点で見ることはなかなかないだろう。
音を感じる絵画にどんなものがあるかを思い浮かべるとき、サブタイトルの風雨、鳥、人は連想されやすいが、そこに雪村周継「竜虎図屏風」、久隅守景「舞楽図屏風」まで展示されるのが根津コレクションの底力だ。
二階の茶道具展示室のテーマは「清秋を楽しむ茶」。秋は音から訪れることを藤原敏行の和歌とともに思い出す。